「あなたにとって、ペットちゃんはどのような存在ですか?」
と尋ねられた時、同じ家族の中でもひとりひとりによって回答は異なることと思います。
「我が子のよう」「親友のよう」「きょうだいのよう」「相棒のよう」「えさをあげる時だけ懐いてくるけど、それでも可愛い存在」など、様々な回答があることでしょう。
一緒に暮らしているときのその子の存在が、家族ひとりひとりの心の中で異なるように、ペットちゃんが亡くなった後の悲しみの度合いも家族それぞれで異なり、時には悲しみの温度差や深さがことなる場合があります。
同じ気持ちで一緒に悲しんでくれれば、お互いの気持ちを打ち明け合って、話を聞き合って悲しみを癒してゆくことができるかもしれませんが、家族間で悲しみの度合いが違うと
「いつまで悲しんでいるの?」
「いい加減メソメソしないほうがいいよ」
「そんなに悲しむなら新しいペットを飼う?」
などのような言葉をかけられて、「家族なのにどうしてこの悲しみを分かってもらえないの・・・!?」と、尚更心の傷が深くなってしまうこともあります。
悲しみの表現や受け止め方は人それぞれ…
以前お伺いした、ペットちゃんの旅立ちのお手伝いをさせていただいたご家族様の場合、お父様が代表されて火葬依頼書等の記入後、ご火葬の流れについても聞いていただきました。その際、お別れセレモニーやお線香による最期のお見送りの他、ご拾骨も一切行わなくて良いと、ご希望されませんでした。
「私は今日は忙しいので後は家族が対応しますから…。」
と、お父様は足早にその場を離れられました。
数分後、お母様とお子様達がペットちゃんをお連れになられ、お見送りの準備をされました。
皆様にもお別れの流れを再度ご説明させていただくと、お別れセレモニーやお線香で見送り、ご拾骨もしてあげたいとのことでした。
「パパは悲しくないのかな?お別れしなくていいのかな?」
お子様達はお父様を気にかけながらお手紙やお花を手向けられました。
お父様のご希望もお話しし、他のご家族様のご了承を得て、お父様不在の中ペットちゃんのご葬儀・ご火葬を執り行いました。
ご火葬後、お亡くなりになったペットちゃんの思い出をお話しながらご拾骨されたお母様とお子様。
お父様はお亡くなりになったペットちゃんをとても溺愛されていたそうで、息を引き取られた時には大変ショックを受けられお気持ちの整理がつかないようで、葬儀や拾骨を希望されなかったのもペットちゃんの死を受け入れたくなかったので、ひたすら仕事に没頭している様子だとお母様がお話しくださいました。
ご火葬中、何度も様子を見に来られ、ご返骨後そっと火葬車を見送ってくださったお父様の姿が思い出されます。
実際は辛く悲しい気持ちでいっぱいなのに冷たく怒ったような言動になってしまったり、喪失感が大きすぎて、気持ちの置き場所をどこに落ち着かせたらよいのか迷い、心とは裏腹な態度をとってしまったりすることも理解できる気がします。
その子への愛情が深いからこそ亡くなった事実が受け入れられず、悲しみが大きすぎてお骨になった姿を見たくなかったり…。悲しみや辛い気持ちの表現は人それぞれで、悲しいからと涙が出る人ばかりではないのも事実です(このことについては別の記事にて書いていますのでよろしければ読んでみてください。)。
しかし、家族の皆が自分の悲しみと同じくらいに気持ちを共有し合えれば亡き子への想いに心も癒えてゆくことと思いますが、同じ家族であってもペットの死に対する悲しみに温度差があり、「どうしてペットのことでそこまで悲しむのか?」と理解してもらえず、家族の中で一人孤立してしまったり、行き場のない心に悲しみや虚さ、怒りさえも抱いてしまうケースもあります。
ペットちゃんの死を迎えた際に、家族間で悲しみの度合いに温度差を感じた場合、どのようにして気持ちを切り替えたら良いのでしょうか。
少し距離を置いてみる
その子が自分にとってはどんな存在だったのかを考えると、家族間で想いに相違が出てしまうのは、仕方のない部分もあるのかもしれません。
たとえば、散歩や食事、排せつ、通院など我が子のように付きっきりで身の回りのお世話をしてきた人と、帰宅後少し遊んでおやつをあげる人ではその子への感情や思い入れは少なからず違ってはくるのではないでしょうか。
もちろん家族の一員として毎日を一緒に過ごす中で、ペットちゃんと接する時間が少ない方もペットちゃんに愛情を持って接しているのですから、万が一の場合、喪失感も大きいことと思います。
けれど、全てに関わってきた人にとっては共に過ごした時間も長く、心の支えであったり、精神的絆も強くなり、亡くなった時の悲しみや辛さはさらに大きなものとなるのではないでしょうか。
「家族に悲しみを理解してもらえず辛い…。」
そのような場合、少し距離を置いてみましょう。
距離を置いた時間の中で、少しずつ気持ちも落ち着き、ひとつひとつ冷静に考えられることもできるようになるでしょう。
“いつまでも泣いてどうするの”
“また飼えばいいでしょう”
このような言葉も裏を返せば、元気な笑顔を取り戻してほしい思いでかけた言葉なのかもしれません。
理解してもらえないのは誤解であってご家族様もまた、深い悲しみの中、ご自分の感情をどのように表してよいか分からず、本当は同じ辛さを感じていることもあるようです。
辛い気持ちを抑えようとする家族と、それを素直に出してしまう自分との差がこの温度差を生むのかもしれません。
誰かに話してみる
家族との間に悲しみの温度差を感じ、辛い時は一人で悩まれずに自分の気持ちを理解してくれる家族以外の人に話してみるのが良いと思います。
同じ経験を持つ人やペットを飼っている友達…最近ではSNSでペットを亡くした話を投稿される方もいらっしゃいます。
日頃から交流のある人であればなお安心して話せるのかもしれません。きっと気持ちを分かってもらえると思います。
話せる人が身近にいなければ、ペットロスのカウンセラーに相談するのもいいでしょう。
大切な家族の一員のペットちゃんを亡くされた時、家族の中でその悲しみに対して温度差を感じてしまうと、さらに悲しみが増長されてしまう傾向があるといわれています。
これまで紹介してきたような予防・対処を試みてみることで、ペットロスを重症化させないようにしましょう。
以下のペットロスに関する記事もよろしければご覧ください。