「ペットロス」
ペットちゃんの死に向き合い、お見送りのご経験をされた方の中には、「ペットロスになった」という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
今まで一緒に過ごしてきた大切な家族の一員であるペットちゃんが虹の橋へと旅立ち、そのお別れの悲しみや喪失感から、精神的なショックを受けられる方はたくさんいらっしゃいます。
中には、深い悲しみから心身ともに疲弊してしまい、体調不良になってしまうという深刻な場合もあります。
「私はペットを飼っていないから。」「まだまだうちの子は元気だから。」と、ペットロスとは縁遠い方でも、もしかしたら明日、あなたの大切な人のペットちゃんが亡くなり、身近な人がペットロスになるかもしれません。
そのようなとき、身近にいる人たちはどのように接したら良いのでしょうか。
ペットの死を、共に偲ぶ。悲しみを共感する。
ペットちゃんの旅立ちを悲しむその方にとって、ペットちゃんは「いつも家族を笑顔にしてくれたかけがえのない存在」「辛い時にそばでよりそってくれた大切な家族」「子供がわり、兄弟がわり」と、特別な存在であったことに間違いありません。
ペットちゃんが死を迎える背景には、様々な場合があります。
老衰、病死、突然死、事故死、、、安楽死という場合もあるでしょう。
どんな状況で迎えた旅立ちの瞬間でも、ご家族様にとっては大きな大きな悲しみの中にいらっしゃいます。
時には、ご家族様自身の行動が、死因となってしまった病気や事故の引き金になったということもあり、自分自身を責めている場合もあります。一概に、みんなが大往生で亡くなるというわけではないのです。
無理に元気づけたり、茶化したりするよりも、まずは「共に偲んで、悲しみを共感すること」がとても大切になります。
ペットロスの方へ、どのような言葉をかけたらよいか?
ペットちゃんが亡くなったばかりの時には、悲しみでペットの死を打ち明けられない方もいらっしゃいます。
いざ、「実は先日、うちのペットが亡くなって・・・」と打ち明けてくれた際には、気持ちを込めてあたたかい言葉をかけてあげたいですね。
「実はペットが死んじゃったの。」と打ち明けられたら・・・
「そうだったんだね。いろいろと辛いだろうけど、打ち明けてくれてありがとう。
気持ちが落ち着いてきたら、ゆっくり思い出話を聞かせてね。冥福を祈っていますね。」
などのように、家族の悲しみを汲み取って、寄り添う言葉をかけてあげると良いかと思います。
ペットちゃんの思い出話をすることで、ペットちゃんを偲び、気持ちを落ち着かせることのできる方もいらっしゃいます。そのような場合には、そっと耳を傾けてお話を聞いてあげると、その方もよろこんでくださることでしょう。
長生きをしたペットちゃんの家族には「□□さんの家族になって、幸せだったね。大往生だったね。」と、少し明かるく声をかけてあげるのも良いでしょう。
病気で亡くなった子の場合、最期までご家族様が動物病院に連れながら、懸命に看病をしてこられたことと思います。昼夜問わず看病をして心身ともに大変な中でのペットちゃんの死は、悲しみもとても大きいことと思います。
「最期まで大切にしてもらえて、幸せな生涯だったことと思います。」
と、看病をしてこられた家族のかたのお気持ちを汲み取る一言を添えてあげると良いでしょう。
事故死のペットちゃんのご家族様は、ご自身を責めていらっしゃる場合もあります。
報われるような気の利いた一言をかけるのが難しくても、「虹の橋で元気に過ごしていられるよう、私も冥福を祈っていますね。」と優しく言葉をかけて差し上げると、ご家族様にとって支えとなり得るかもしれません。
言ってはいけない言葉
ペットちゃんを亡くされて悲しみの最中のご家族様に、言ってはいけない言葉もあります。
「たかがペットじゃないの。」
「どうしてそんなに悲しむの?」
「私には理解できない。」
「新しい子を飼えばいい。」
「(亡くなるのが)早かったね。可哀想に。」
家族同然のペットの死を経験した方には、言う人にとっては何気ない1つ1つの言葉が辛辣にとらえられてしまう場合もあります。
また、
「なんで死んじゃったの?」
などと死因を根掘り葉掘り聞くのも良くありません。
ペットの死への悲しみが深く、気が動転している場合も
ペットちゃんの死を迎えた方の中には、悲しみが深く、気が動転してしまう方もいらっしゃいます。
ペットちゃんが亡くなったことやその時の状況、悲しいお気持ちについて、何度も同じ話を繰り返してしまう場合や、「あなたには私の気持ちなんてわからないでしょう!」と、行くあてのない悲しみが怒りに変わって、周囲の方に矛先を向けてしまう場合もあります。
また、「私が悪いの。もっとこうしてあげればよかった・・・」と、ペットちゃんに対する後悔の念で押しつぶされそうになってしまう方もいらっしゃいます。
周囲の方が何度も、「そんなことないよ。〇〇ちゃんは、□□さんの家族になって幸せだったと思うよ。」と慰めても、聞く耳を持ってくれないこともあるでしょう。
ペットロスになった場合の状況は、個人個人で本当に様々です。
寄り添い支えたくても、周囲の方が手に負えなくなってしまう場合もあるかもしれません。
その時は、無理をせず専門家に頼ったり、時間の流れが悲しみを癒すのをそっと見守って差し上げるのも方法なのかもしれません。
ペットロスの方へ言葉をかける以外にできることは?
私がペットを亡くした時に、とても心が救われた出来事がありました。
一人の友人は、「虹の橋」という詩を教えてくれました。
「ペットを亡くした人に世界中で広まっている、虹の橋という素敵な詩があるから、良かったら読んでみてね。」とメールをくれました。
また、家族ぐるみで生前のペットと付き合いのあった友人は、お花を手向けお線香をあげに、我が家まで訪ねて来てくれました。
最期の様子を聞いて、一緒に涙を流してくれました。
また、一人の友人は、ペットの似顔絵を描いてプレゼントしてくれました。
どうしようもなく悲しくて辛いあのとき、言葉をかけてくれたり、そばで寄り添ってくれた友人は、今でも大切な存在です。
この他にも、ペットロスの方へできることとしては、下記のようなことが考えられます。
・お花やお線香、ロウソクなど、祭壇に飾れるものを贈る
・手元にあるそのペットちゃんの写真を現像して差し上げる
・お供え物になりそうなおやつや、ご家族様が元気の出そうな贈り物を贈る
・気分転換になるよう一緒に出掛ける
大切なのは、悲しむ家族に寄り添った、心のこもった言動です。
あなたらしい言葉や心遣いでペットロスの方に寄り添って差し上げることが、その方と今後も良い縁を保つことができるために大切なことです。
ペットロスって克服するもの?克服できるもの?
「ペットロスを克服した」という状態は、どういう状態でしょうか。
悲しみを完璧に忘れて、ペットと過ごした記憶が薄れていくことでしょうか。
それなら、私はペットロスから克服できなくて結構だと思っています。
なぜなら、愛犬を見送ったその日から一度たりとも、愛犬のことを忘れた日などないからです。
旅立ちを見送って失った悲しみはとても大きいもので、ペットが亡くなった後の悲しみに暮れた精神状態をペットロスというのであれば、ペットを愛して共に暮らしてきた人なら誰にでもなりうることです。
涙に暮れる日々が続く人もいるでしょう。
ですが、悲しむ日々があるということは、ペットからたくさんの幸せをもらってきた証拠でもあります。
ペットを亡くしたばかりの時は、楽しかった思い出よりも、悲しみの方が大きいかもしれません。
ですが、少しずつ時間が経てば、楽しかった思い出や笑顔あふれる毎日のこと、ちょっと笑ってしまうような可愛い癖、
「うちの子ってこんな可愛いところがあったよね。」
と笑顔で思い出せる日がきっと来ることと思います。その日が早く来る人もいれば、ゆっくり訪れる人もいます。
ペットロスは、「克服する」ものではなく、「寄り添って生きていくもの」だと私は思います。
笑顔でペットとの思い出話ができる日が、少しでも早く訪れるように見守ること、支えることが、身近な人がペットロスになった時に、周りの人たちができることなのかもしれません。
新しいペットを迎えたら、ペットロスの家族は元気になる?
「家族が元気になるためには、新しいペットを飼った方がいいのではないか?」
と悩まれる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
新しくペットを迎え入れることで、生活リズムが変わり、ペットを亡くした時の悲しみから少し気が紛れて元気になると言うこともあることでしょう。
一方で、「まだ新しい子を迎える気持ちになんてなっていないのに!」と、提案を拒絶されてしまうこともあるかもしれません。ペットを亡くした本当の悲しみを家族なのに理解してくれない、と、ペットロスが深刻な方は心を閉ざしてしまうことも考えられます。
まずは、ペットロスの家族に寄り添って、本人の気持ちを大切に考えつつ、時間の流れがゆっくりと悲しみを癒してくれるのを待つことも1つの方法かもしれません。
新しいペットを飼うかどうか、どうやって持ちかける?
ペットロスで悲しむ方に、直接的に「新しい子を迎える?」と聞くのは、あまり良い提案ではありません。
また、「ペットロスを緩和するために」と言うこちらの思惑を感じさせるのも、ペットロスの方にとっては、亡くなった子を想って偲んでいる気持ちに水を差されていると感じてしまうかもしれません。
・ペットロスの悲しみを癒すため
・亡くなった子の代わりに
・前の子を忘れさせてあげよう
などの気持ちで、新しい家族を迎える提案はしない方が良いでしょう。
亡くなった子を大切に思っている方にとって、「忘れさせてあげよう」「気を紛らわせてあげよう」と言う思いは、悲しみを癒すのではなく逆効果になってしまいます。
新しいペットは前の子の代わりではない!飼うなら当然責任を持って
亡くなった子の代わりはいません。
また、新しく迎えた子も、その子はその子として個性があり、感情があり、オンリーワンの子なのです。
見た目が似ていようが、誕生日が近かろうが、亡くなった子の代わりではありません。
良かれと思って迎え入れた子が、ペットロスが深刻な家族から「まだ新しい子を飼う気にはなれない!」と拒絶されても、一度迎え入れたからには飼い主としての責任が伴います。
新しいペットを拒絶する家族と、新しく迎え入れたペットをどのように一緒に住んでもらいますか?
家族のペットロスを克服させようと先走りすぎて、命を預かるという責任を忘れてはいけません。
新しい家族との「縁」を感じさせることが大切
我が家では、ペットが亡くなってからその後4年間、新しいワンちゃんを迎え入れることなく生活をしていました。
4年間、誰も「新しい子を迎えよう」などと口火を切ることもなく過ごしていました。
家族全員、ワンちゃんを亡くした悲しみが深く、新しい子を迎える気持ちにはならなかったのが正直なところです。
ただ、「いつかまた犬を迎える時には、保護犬にしよう。」くらいの話はしていましたが、実際に行動に起こせる気力はありませんでした。
そんなある日、突然知人から「大型犬で、前の家族の都合で飼えなくなった子が路頭に迷っているのだけれど、以前お宅では大型犬を飼っていたから、引き取ってもらうことはできるか?」と言う話が持ちかけられました。
偶然にも、その子は亡くなった愛犬と同じ犬種でした。
「これも縁」というのが、その時家族の心に浮かびました。
私を含め、父や母も迎え入れたいという気持ちになりましたが、心配なのは祖母でした。当時、大声をあげて涙を流し、愛犬の死を悲しんでいた祖母が、また犬を迎えることにイエスと言ってくれるかどうか・・・
そこで、思い切って祖母に相談をしました。
「同じ犬種の子が引き取り手がいなくて路頭に迷っている。手当たり次第聞いてみてもみんな、大型犬だからと断っているらしい。うちが断ったらその子は保健所行きらしいのだけれど、どうしたらいいのだろう?」
祖母の良心に訴えかける作戦で、新しいワンちゃんを迎え入れる提案をしたところ、祖母は首を縦に振ってくれました。
「縁があったからうちに来た。」というとてもシンプルながら大切なことを感じてもらうことが、新しく家族としてペットを迎え入れる心のハードルを低くし、結果的にペットを亡くした悲しみを少しずつ癒しながら、ペットと暮らす幸せを再認識させてくれるきっかけになるのかもしれません。
でも、新しい子を迎えてから尚更、前の子を思い出さない日はなくなりました。しかし、思い出す時には涙ではなく、笑顔で思い出せるようになっています。
我が家では偶然にもこのような出会いがあり、縁を感じることで新しい家族を迎え入れる決心ができました。
自然と待って出会う縁を大切にするも良し、自らご縁を迎えに行くのも良しだと思います。
ペットロスで悲しむ家族を想って、新しくペットを迎え入れようとされる際には、家族の方に新しいペットとの「縁」を感じてもらうことが大切なのだと思います。