ペットちゃんを飼われる際には、やがて訪れる“別れ”を覚悟して迎え入れられた方もいらっしゃることと思います。
ペットの死についてはあまり考えたくないことですし、誰もがそんな日が来てほしくないと思うものです。
しかし、ペットちゃんと過ごす日々の中で別れの時は必ず訪れます。そのときが迫ってくると、平常心ではいられなくなるかもしれません。
また、最期の時を在宅で看取ろうとお考えのご家族様にとっては、なおさら不安なお気持ちでいっぱいになるでしょう。
最後まで一緒にいてあげるため、息を引き取る前の兆候を理解した上で、最期の時がペットちゃんとご家族様にとって穏やかで、大切な時間となるよう、ペットちゃんの旅立ちに備えることもまた重要なことです。
ペット が亡くなる前の兆候の例
ペットがなくなる前の兆候の例は、必ずしもこのような変化に当てはまらないことがありますし、予兆がまったく見られずに、あるとき突然亡くなってしまう場合もありますが、ペットちゃんの様子が普段と違うときは、以下のような変化が見られないかチェックしてみましょう。
食欲が落ちる
加齢により、消化・吸収能力が衰え身体活動量が低下することから、高齢になるにつれて食が細くなるのが一般的です。
食が細くなっても、自分の好物や美味しそうな匂いがするものなら食べるということは少なくありませんが、亡くなる前には全く食欲がなくなり、水さえ飲まなくなることもあります。
食欲低下に伴い尿量も少なくなっていきます。
寝たきりになる
高齢になると周りの様子に興味を持てなくなったり、体力が低下したり、関節に痛みがあったりするために、犬の場合は散歩にも行きたがらず寝てばかりいるようになります。
やがて死期が近づくと、身体を起こすことが困難となり、横たわったまま寝たきりの状態が続くようになります。また、意識がもうろうとしていることが多くなり、呼びかけにもあまり反応しなくなります。
下痢や嘔吐が続くようになる
加齢と共に胃と腸の働きが悪くなり、消化・吸収能力が衰えます。
そのため、硬い食べ物や消化の悪い食べ物を食べると、嘔吐や下痢をしやすくなります。また、亡くなる数日前から下痢や嘔吐が続くことが多く、排泄のコントロールができず、下痢便が漏れ出てしまうこともあります。
死の間際に排尿・排便をするのはよくあることで、これは亡くなる前に体の中のものを全て出し切るという本能が働くためだと言われています。
体温が下がる
亡くなる前に体温が下がったり、震える様子を見せたり、足が冷たくなることがあります。
動物の体温の低下は死に直結する危険なサインと言われおり、かなり調子が悪いことを示しています。
痙攣を起こす
死が近づくとけいれんを頻繁に起こすことが少なくありません。けいれんを起こしているときは苦しそうで見ているのがつらくなりますが、意識がないため本人は苦痛を感じていないことが多いと言われています。
呼吸が不規則となる
最期が近づくと呼吸が不規則となります。浅い呼吸になったり、短時間の呼吸停止、深く速い呼吸を繰り返します。
このとき苦しそうに見えるかもしれませんが、脳が徐々に低酸素状態となり苦しさはあまり感じていないと言われています。
呼吸回数が減ると心拍数も減少してやがて息をひきとります。
最期が近づいたときの変化と対応を知っておく
水を飲まなくなると内臓の機能が弱まっていきます。それに応じて心臓の機能も弱まっていくことでしょう。死が近づいているのです。
水を飲まない状態がしばらく続くようであれば、口元を湿ったもので濡らしてあげると良いでしょう。
最期のときが近づくと、体からサインがあらわれます。それは主に反応の低下や呼吸の変化です。こうしたサインを初めて目にすると驚かれて、気が動転するかもしれません。それが自然な変化であることをあらかじめ知っておき、落ち着いて向き合うことに努めましょう。
だんだんと意識が遠のいて反応することが難しくなってきますが聴覚は死の直前まで残ります。
また、反応はできないとしても、ご家族様の声や手のぬくもりはペットちゃんに伝わっています。
声をかけたり手を握ったり足をやさしくさすったりしながらペットちゃんの気持ちを落ち着かせてあげて、傍で見守ってあげましょう。
ペット が亡くなった際の体験談
訪問火葬をご依頼くださったご家族様、ペットちゃんの旅立ちの様子についてをご紹介します。
ペット達の最期の様子や、飼い主がどうやって心の準備をしていったのかを参考にしていただければと思います。
みんなが集まった日に旅立つ
動物病院の先生から余命1ヶ月と宣告を受けていたワンちゃん。
兄弟のように一緒に育って可愛がってくれたお兄様達は進学のために遠方で暮らしていたそうです。
お兄様達の年末の帰省まで後2ヶ月…。ご家族様はきっと皆が帰省するまで間に合わないだろうと覚悟されていたそうですが、ワンちゃんは頑張って帰りを待ち、大好きなご家族様全員が揃い見守る中で旅立たれたそうです。
お亡くなりになられたワンちゃんのご葬儀・ご火葬にもご家族様皆様でお立会いくださいました。
ワンちゃんが余命を受けながらも懸命に帰りを待っていてくれたことで、最期の時間、心を通わせ見送ることができたことに涙を流されました。
ご家族様は今でもワンちゃんが皆を見守ってくれていて、それぞれの心の中で生き続けているようだとお話くださりました。
家族の腕の中で静かに
数年前に猫ちゃんを亡くされ、保護猫ちゃんとの新しい暮らしを始めたご家族様。
だいぶ年齢を重ねた猫ちゃんだったために、いずれ来る別れは覚悟していたそうですが、体調を崩し食欲が無くなってしまった猫ちゃんを動物病院に連れて行くと入院を勧められたそうです。
以前飼われていた猫ちゃんがお亡くなりになった際、治療のためとはいっても、いろいろなチューブにつながれ入院したまま別れたことにとても悔いが残ってしまい、今度は自宅で最期を看取ることをお決めになられたそうです。
水も受け付けなくなり、かろうじて息をする姿を見るのはとても辛く一時は“やはり入院したほうがよかったのかも”と思うこともあったそうです。
ただ、猫ちゃんが不安な時もずっと傍にいることができ、最期は腕の中で眠るように静かに穏やかに息を引き取られたそうで、ご家族様自身、先に旅立った猫ちゃんへの後悔の思いも一緒に浄化されたような気持ちになったと話されていました。
いつか必ずペットちゃんとの別れの日はやってきます。
そのときに喪失感や深い悲しみを受けないご家族様はいないと思いますが、後悔や自責の念があると、深刻なペットロスに陥りやすいと言われています。残された時間を有意義に過ごし、最期にきちんと「ありがとう」を伝えることや「やれるだけのことはやった」と思えることが大切です。
ペットちゃんとの残された大切な時間を大切にさいごまでたくさんの愛情をあたえてあげてください。