家族同様の存在である、愛するペットちゃんとの別れはとても辛く悲しい出来事です。
歳を老いたり、闘病で日々活気や食欲を失っていくペットちゃんと接しながら、やがて訪れる「別れ」を考えた時に、最期は住み慣れた自宅で家族だけで看取りたいと思われる方、また、適切な処置を受けながら動物病院で最期を看取るお考えの方もいらっしゃることと思います。
人の場合、患者さんの多くが「できることなら住み慣れた自宅で安らかに最期を迎えたい」と願われているようです。
その場合、苦痛や不快感を緩和し、本人の意思を尊重しながら残された生活の充実を優先させるために、家族や介護者が本人のそばにいて最期のときまで看病やお世話をするという、肉体的にも精神的にも負担がでてきます。
ペットちゃんの終末期を考えた際にも同様の迷いや悩みの中、大きな決断を迫られます。
ここでは“在宅での看取り”“病院での看取り”について考えていきたいと思います。
家で看取りたいと話したら獣医さんと喧嘩になった
ある癌を患っていたワンちゃんとご家族様のお話で、治療で通院されていましたが、病状の悪化も伴い、万が一のこともあり、入院を勧められたそうです。
ワンちゃんにとって入院生活は、慣れない環境とご家族様と離れて過ごす不安にとてもストレスを感じ、食事や水分も受付なくなってしまったそうです。
その様子にご家族様は在宅での看取りを決心され、獣医さんへ退院の相談をしたところ、
「今の状態で家に帰すことは出来ない!」
「在宅での投薬や治療は無理です!」
「それでも退院させたいのなら何があってもウチでは診ませんから。」
と、一方的に言われたそうです。
治療や処置を最優先する動物病院としての立場としては当然の対応だったのかもしれないと思いながらも、もう少し患者に寄り添った言動や理解が欲しかったとワンちゃんのご家族様はお話されました。
動物病院はご家族様へ治療法を開示し、何で入院が必要なのか、在宅で看取れない理由は何なのかやそのリスクを丁寧に説明し、コミュニケーションをとりながら、患者であるペットちゃんとご家族様にとって一番良い治療環境を考慮・理解し、不安や不信感などの後悔がない「看取り」をサポートしてあげれる存在であって欲しいと願います。
動物病院では人間の病院と違って、患者本人が治療を選べるわけではなく、飼い主であるご家族様が治療を選択します。
獣医さんから病名を告げられ治療法や投薬を打診され、それで経過を見ながら改善しなければまた治療法を変えながら回復を目指すこととなりますが、その治療法の提示の基準はご家族様によって異なることと思います。
ペットちゃんの場合、保険加入は任意であり、受診料や薬代、入院料など…手術にいたっては高額の医療費がかかります。
入院が必要な状況でも、金銭的な理由で入院を選べないご家族様や仕事の都合上で在宅治療を選べないご家族様もいらっしゃることと思います。
もちろん金銭的理由とは別に、ペットちゃんが住み慣れた家で家族に囲まれ穏やかな環境で治療できればとお考えのご家族様もいらっしゃいます。
治療が長期化し、完治の見えない先行きを考えると、ペットを苦しめている気持ちに苛まれます。
今ここにある時間を大切にし、残された時をできるだけ悔いが残らないよう過ごしたい。愛するペットには苦しまないように過ごしてもらいたいと思う気持ちがあるのも当然のことでしょう。
「在宅」か「病院」なのか、看取る場所の選択に正解はありませんが、ご家族様が納得した上で後悔のないようにされることが大切です。
『家で看取る』家族の腕の中で…
治療や投薬、処置などのために通院しながらの在宅での看病。動物病院が休診の時やペットちゃんの体調によってどうしても連れていけない場合もあります。
そのような場合にも、獣医さんより万が一の場合の対処法や、投薬の仕方や処置などを教えてもらい、自宅で可能な限りの看病ができる準備をしている方もいらっしゃいます。
私共でお伺いさせていただいた、ご自宅でペットちゃんを看取られたご家族様で、
「思い残すことがないくらい、充分に手をかけてあげることができました。」
と、家族皆が見守る中、息を引き取られたペットちゃんを最後の最後までご自身の腕の中で見届け慈しむことができたことに、亡くなったペットちゃんとの深い絆を感じられ、悲しみでお辛い状況の中でも笑顔で送り出されていらっしゃいました。
このようなお気持ちは、ペットちゃんを亡くされた深い悲しみから起こる「ペットロス」への緩和にも繋がることと思います。
もしもに備えて利用する獣医を決めておこう
先に述べたように、ご家族様と獣医さんとのコミュニケーションは家で看取る場合にはとても大切なことです。
在宅での日々の看病・介護の中でペットちゃんの急変やケアの迷いなどで慌ててしまわぬように、信頼できる獣医さんへ受診や相談ができるような体制をとっておきましょう。
ペットの安楽死
一日でも長く延命を望み積極的な治療を望まれるご家族様、あるいは治癒が望めない病状に痛みや苦痛の緩和を考え安らかに死を迎えられるよう獣医さんと相談し、安楽死を選択されるご家族様も少なからずいらっしゃいます。
安楽死については賛否ございますが、それぞれに選択せざるを得ない事情があり、そのご家族を否定することは出来ません。
慌てない様にあらかじめ家族で話し合っておく
「家で看取る」か「病院で看取る」かの最期の判断はご家族様に委ねられます。
在宅で終末期のペットちゃんの看護をする場合には、多くの身体的、心理的痛みが伴います。
痛みで苦しむペットちゃんを目の当たりにしたり、この子がいなくなったらどうしたらいいのだろうという不安や、こうなってしまったのは自分のせいではないかという自責の念にかられることもあるかもしれません。
治療方針の選択について、自分の選択が正しかったのかという迷いが伴うこともあるでしょう。
『家で看取る』ご家族様皆様の思いが一緒でなければ、ペットちゃんの在宅での看取りの環境を維持するのは難しいことです。
主で看病されている方が不在の場合、ペットちゃんが急変した場合、万が一の場合、あらゆることを想定し、ご家族様皆様、獣医さんと情報を密にとられ、「ペットちゃんの幸せな最期」を後悔のないように十分に話し合っておきましょう。